冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
もう、夜の世界に足を踏み入れることは2度とないと思っていたのに。
あの日、シャー芯を買いに行こうと軽い気持ちで足を踏み入れてしまったわたしが馬鹿だったのだ。
そして、あの夜のことがなければ、この街のトップとこれから会わなければならないという約束も結ばされることはなかったのに。
全ては、わたし自身のせい。
そこまで、考えた時だった。
────ピーンポーン。
その音は、今までで1番重く、厳格な雰囲気を醸し出してこの家中に響き渡った。
キュッと喉を締められた感じがして、思わず肩が震える。
鏡に映し出されたわたしの顔は、これから処刑される人間なのかと疑ってしまいたくなるほど青白く顔面蒼白になっていた。
鉛のように重たくなった足を引きずりながら、わたしは洗面所を出て、玄関へ繋がる廊下を歩く。