冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
一体何をする気だろうと身構えたわたしに、苦笑いを浮かべた飛鳥馬様は「大丈夫。怖いことは何もしない」と優しい声音で囁いた。
それからは、されるがままだった。
わたしの太ももに飛鳥馬様のひんやりとした冷たい手が触れて、次の瞬間には足が宙に浮いていた。
上質なスーツを着た飛鳥馬様の方腕が、わたしをお姫様抱っこするように太ももの裏に回され、もう一方の腕はわたしの背中を支えるように、肩に優しく添えられた。
………え。
ええ……っ??
突然のことに、脳内がパニックを迎える。
わ、わた、わたわたし……っ。飛鳥馬様にお姫様抱っこされてる!?
首を少し横にずらしただけで、飛鳥馬様の陶器のように透き通る白い肌と、美しすぎるパーツがこれまた素晴らしく配置されているお顔が至近距離で瞳に映る。
少しでも身動きを取れば、鼻と鼻がくっついてしまいそうになるくらい近い。
どうしよう。不可抗力の心臓のドキドキが止まらない。