HONEYHOLIC（３）リゾートシンデレラ～十月十日の結婚生活。ひと夏の偽恋人でしたが、双子を授かりました～

「冷房の温度はどう？」

「大丈夫です」

「じゃ行くよ」

課長はハンドルを握り、低速度で出入り口へと走った。

彼の向かう『ベルモンドホテル赤坂』は外資系の老舗ホテル。

赤レンガの正面エントランスが有名で、ドラマのロケにも多く利用されていた。

ホテルの専用駐車場にベンツを停めて、一階のラウンジでランチをオーダーした。

英国調のインテリアで統一された重厚感あるソファや布張りの椅子。
天井まで続く硝子窓の向こうにはまだまだ残暑の厳しい夏の陽射しが照り付け、色鮮やかな緑の葉に反射していた。
窓際のテーブル席を座り、向かい合わせに腰を下ろした。

課長のお任せでランチコースのオーダーを終え、ウェイトレスが置いた冷えたグラスの水で乾いた喉を潤した。

「私だけ優雅にランチ、食べてもいいんでしょうか？」

「狩野さんに頼みがあって…社外に連れ出した」