温かいご飯

捜索にご協力を

「皆さんどうか、うちの燈矢(とうや)を捜してください。お願いしますっ!!」
ある一人の母親の必死な声が、全国で放送された。七月二十日、西山 燈矢(にしやま とうや)は遊びに出掛けたが、連絡がつかず、次の日になっても帰って来なかった。警察は色んな可能性を考慮し、広い範囲で捜索を進めた。捜索開始から五日が経ったが、未だに目撃情報も発見するための手掛かりも、何一つ見つからない。そんな中、西山家の家に訪ねてきた者がいた。家のチャイムが鳴り、母はまたメディアの取材だろうと思いドアを開けたが、立っていたのは七十歳ぐらいの優しそうなおじさんだった。
「行方不明者を捜すボランティアをしている早北だが、少し燈矢くんについて質問しても良いかな?」
それを聞いた母は、とても嬉しそうな笑顔になった。一人でも多く、捜索に協力してくれる人がいて笑顔になったのか。それとも別の笑顔か。
「はい。何でも答えます。ここだと立ち話になりますし、どうぞ上がってください。」
「あぁ、すいませんね。お邪魔するよ。」
母は早北をリビングまで案内し、いつもご飯を食べているテーブルの席に座ってもらった。
「綺麗に片付いてますな。普通、家族が行方不明になっていると、何かする事に気力を無くして、部屋が散らかる人が多いんだよ。」
部屋を見回しながらそう言う早北に、母は冷たいお茶を持って来ながら口を開く。
「いつでも燈矢を迎えれるように、綺麗は保っています。」
早北の前にお茶を置き、母も席に着いた。
「質問というのは何でしょう?」
「いくつか聞きたいんだが、まず居なくなった時の状況を聞きたくてね。」
「家を出る前は、いつもと変わらない様子でした。遊びに行ってくると家を出たのが午後二時ぐらいで、遅くても九時には帰ると言っていたのに、日付を過ぎても帰って来なくて…。」
「本当にいつもと変わった様子は無かったんだよね?前日とかも。」
「はい、いつも通りでした。」
それから三十分程、燈矢について質問された。「捜索して、何か分かったら連絡するから。」と、電話番号が書かれた紙を母に渡すと、早北は出て行った。電話番号が書かれた紙を見つめながら、母は不気味な笑みを浮かべた。

それから三日後、母のもとに一本の電話があった。早北からだった。
「燈矢くん見つけたぞ。」
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