惚れた弱み
そしてインターハイでは、決勝に進出し、見事「優勝」を勝ち取った。
そのうち、自分の名前が書かれた垂れ幕が校舎の壁に設置されるだろう。
それを見た菜々が、何と言うか楽しみで仕方なかった。
しかし、思わぬタイミングで、インターハイの結果を伝える機会ができた。
後日持ち帰ろうと、部室にそのまま置いていた大きな優勝カップ。
引退するので、ロッカーを掃除して綺麗にした後、家から持ってきた袋に優勝カップを入れて部室の外に出た。
すると、サッカー部の部室前に、見知った、小さいポニーテールの女子がしゃがみこんでいるのを見つけた。
「橋本ちゃん?」
ドキドキしながらそう声をかけると、菜々がこちらを振り向いた。
何だか泣き出しそうな、悲しげな表情をしている。
「矢嶋せんぱ…」
そこまで言うと、菜々はハッとしてこちらに駆け寄ってきた。