惚れた弱み


――マジか。相良君、彼女持ちって…。


ラッキー、と思いながら横にいる菜々を見下ろす。


「…行ったみたいだけど?」


博孝はそう言うと、菜々の顔を覗き込んでみた。


俯いて、泣き出しそうな顔。


ラッキー、と思った気持ちがシュルシュルと萎んでいく。


ライバルだと思っていた相手に彼女がいるというのは、自分にとってはかなりの好都合。


とは言え、菜々が落ち込み、悲しんでいるところを見るのは辛かった。


何と声をかければいいか分からず、黙っていると、菜々の方から沈黙を破った。


「…彼女、いるみたいです。」


「橋本ちゃんの好きな人に、彼女がいるってこと?」と尋ねてみる。


菜々は俯いたまま、コク、と頷いた。 


「そっか。」


――やっぱり、好きなのか。相良君の事。


ぐっと、拳を握る。


悔しい。


自分はこんなに菜々を思って、どうしたら菜々が笑うかと考えながらいつも接しているのに。


相良に彼女がいるという事実を知って落ち込む菜々を前にして、成す術がなくなる自分の無力さが、悔しかった。


――俺に勝ち目は無いのかよ。

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