惚れた弱み


まだ朝の9時なのに、もう日差しがじりじりと照り付け、気温も上がってきている。
対して夏樹は、涼しい顔でとんでもないことをのたまうものだから、矢嶋は呆れた。


「いや、水の中だし。周りに人もあんまりいなかったから、ギリセーフかなーって思ってさ。」


「いやいや、アウトでしょ、それは。」


「えー、だってさー、そのくらいしないと、あいつ全然スキンシップとってくれないし。2ヶ月経ってもハグ止まりだぞ?キスくらいしてぇー」


「そーやって下心丸出しだから、警戒されて距離とられるんじゃね?」


博孝がため息をつきながらそう言った横で、夏樹は「やべー、もう美桜に触りてー会いてー」等と言って悶えている。


――ホント、工藤ちゃんの事となると一気にアホになるよな。


悶る夏樹を笑いながら見ていると、部室のある建屋からぞろぞろとサッカー部員が出てきた。

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