惚れた弱み
「あ。橋本ちゃん。」
そう夏樹が言った時には、もう博孝の目線は菜々を捉えていた。
菜々は、2年生のマネージャーと一緒に、水分補給のためのウォータージャグを2人で抱えている。
重そうにして運ぶ菜々に『相良』というビブスを着た男子生徒が声をかけ、マネージャー2人からウォータージャグを受け取った。
嬉しそうに御礼を言う菜々。そのまま部室のある建屋に戻っていった。
「お、やっさしー。相良君ってホント、絵に描いたような好青年だな。橋本ちゃん嬉しそうに笑っちゃって。」
そう言った夏樹がチラッと博孝を見た。
「…ひろ、妬いてる?」
すると博孝はぐっと拳を握りしめて言った。
「当たり前だろ。…相良君と話してるのを見る度に、嫉妬でどうにかなりそうだよ。」
本気で言っているのが伝わってくるような空気感に、さすがの夏樹も揶揄うのをやめた。