惚れた弱み
菜々ともう一人のマネージャーがまた建屋から出てきた。
今度は肩からタブレットを提げ、タオルで日差しを遮りながら歩いている。
ーー可愛い。
我ながら、見事に惚れ込んでしまっていると思う。
ボブの髪を後ろで束ね、小さなポニーテールにしている。
ジャージ姿だが、他の女子と比べ物にならないくらい、博孝の目には菜々が可愛らしく映った。
ふと、菜々がこちらの視線に気づいて顔を向けたので、博孝と菜々の目が合った。
それに気づいた菜々は、ペコッと頭を下げる。
「先輩」と「後輩」。
だからこそお辞儀で挨拶をする。
その距離感が悔しくて、ダメ元で手を振ってみた。
菜々は一瞬、驚いたような表情になったが、はにかみながら手を振り返してきた。
菜々が手を振り返してきてくれた瞬間、心臓が跳ね上がった。自分からやっておいて、その可愛さにヤラれた。