惚れた弱み
「…ひろ、顔赤いぞ。」
そう夏樹にツッコまれ、思わず口元を片手で隠す。
「お前って、橋本ちゃんのこととなると、途端にアホっぽくなるよな。」
ニヤニヤしながらそう言う夏樹に、博孝はじろっと目線を向けて反撃した。
「…その言葉、そっくりそのままお前に返すよ。」
そう言って、またチラッと菜々の方を見る。
こちらに背中を向けて、部員達の方へ向かう菜々。
博孝は、陸上部の練習をしている時に菜々を見かける度、その視線の先をいつも確認していた。
最初はチームの練習風景を眺めているだけかと思っていたが、何度か見ていてようやく気付いた。
菜々は、サッカー部エース、相良亮に惹かれているようだった。
博孝は、先日プールへ一緒に遊びに行った時の、菜々との会話を思い出していた。