惚れた弱み

――そう。頑張って考えて、結論を出して欲しい。


――そして、相良君なんかよりも、自分の方が橋本ちゃんに『好き』を伝えていることに気付いてよ。


――早く、相良君への気持ちを整理して、俺のことも見てよ。


そんな葛藤を抱えて乗った、帰りのバスの中では、隣に座っている菜々の肩に、わざともたれかかってみた。


ヘアコロンなのか、菜々の髪からふんわりと甘い香りがして、ドキドキした。


もっと菜々に近づきたい。


そんな衝動を抑えながら、ひたすら寝たふりを貫き通した。


そしてその時、静かに誓ったのだった。


――振り向かせてやる。今度のインターハイで絶対に結果を残して、惚れさせてやるからな。

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