肉を斬らせて骨を断つ
プロローグ
持っていた上着に気を取られて、受験票が手元から離れたのに気づかなかった。
純玲はひらりと舞った受験票を目で追う。
地面に着く直前に、はしっと掴まれた。
驚き、その持ち主を見る。
態々しゃがみ、他人の受験票を取るなんて。
「よし、セーフ」
明るい声色にグレーのヒョウ柄のマフラーをした女子が、自分のことのように嬉しそうに純玲を見上げた。
「どうも、ありがとうございます」
「どういたしまして」
受験票を差し出し、彼女は先を歩いていく。
痛い。純玲は自分の胸を見た。
見たことのない矢が刺さっていた。
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