肉を斬らせて骨を断つ

「てか兄弟三人もいんの? すご」
「伊爪の家族は?」
「冴でいーよ。あたし名字三回変わってて、伊爪のイントネーションもちゃんと分かってないんだよね」

駅の灯りが見える。
そういえばここら辺で純玲に話しかけられたなと思い出す。

「うちはー、一人っ子で、母親が借金残して高校のときにどっか行っちゃってからは、本当に一人。金魚すら居ない」

魚を飼う余裕があるなら食べたい。

そう言うと笑いが取れるんだけど、純玲は生真面目に取りそうなので言わないでおく。

「借金……」

呟く声が、夏の夜風に消えた。

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