肉を斬らせて骨を断つ
こういう日、こういう時、全部が嫌になる。
あたしはあの日の、あの部屋の中へ戻ってしまう。
あの、行き止まりに。
もうどこにも行けない。
「大丈夫か?」
声をかけられ、そちらを見上げた。
知らない男。身奇麗で、無表情で、タイプじゃない、同い年くらい。
誰?
あたしの顔を見た彼は、ポケットからハンカチをこちらに差し出した。
白くて、眩しくて、目がチカチカした。
「え、なに?」
「血が」
「いやいや、汚れるって」
ちらと見えたブランドのロゴに、匂わせかよって笑ってしまう。