肉を斬らせて骨を断つ
ハンカチから距離を取るけれど、彼は手を伸ばしてそれをあたしの鼻に押し付けた。
「いったあ!」
「折れてはなさそうだけど」
「痛い痛い!」
「ちょっと静かにしてくれ」
早朝の駅前にあたしの声が響く。
軈て、鼻血が止まった。当然、白いハンカチは赤く染まっていた。
「どうもありがとう。ハンカチ……出世払いで良い?」
「え?」
突然、彼が可笑しそうに笑うので驚く。
「いや、いい、ハンカチは気にするな」
「そう? あなた善い人だね」
こんな道端で血を流している人間の介抱を進んでしてくれるとは。