肉を斬らせて骨を断つ
あたしはもう、あの部屋には戻らない。
「わかった」
車が発進する。
「傷が治ったら、花火を見に行こう」
「もう夏終わるでしょ」
「来年でも良い」
「来年まであたしが大学通えてるかな」
「通って無くても、一緒にいよう」
純玲の言葉に返事が出来なかった。
「冴」
「……うん」
「ティッシュ……あ、これ」
赤信号で止まり、純玲がこちらにそれを差し出す。
白いハンカチが眩しい。
べしょべしょと泣くあたしは、それを目元へ押し当てた。
「大丈夫だ」
純玲の声に頷く。
「たくさん泣いて良い」