肉を斬らせて骨を断つ

冴の髪を染めるのを手伝い、終わって鏡を覗く。

「なんか」
「え、染め残しある?」
「受験の時を思い出す」

振り向いた冴が怪訝な顔をした。

「なにそれ、今のあたしより二年前のあたしの方が良いってこと?」
「どっちも可愛い」
「……染め残しは?」
「ない」

純玲は前に移動し、緩く腕を広げる。
条件反射のように冴がそこへ収まった。

「ありがとう」

そう言うと、もぞと顔だけを動かし、冴が見上げる。

「なにが?」
「生きていてくれて」

泣きそうな顔で、少しはにかんだ。

あの時、きっと、胸を射抜かれたのだ。






20230820
おわり。

< 82 / 82 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

花に償い
依砥深/著

総文字数/17,568

恋愛(純愛)68ページ

表紙を見る
謎多き旦那様の嘘、または秘密
依砥深/著

総文字数/11,211

恋愛(キケン・ダーク)42ページ

表紙を見る
MINE.
依砥深/著

総文字数/26,768

恋愛(純愛)101ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop