嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~

1 契約結婚

 ハベリア伯爵家、離れの小屋。
 今にも崩れ落ちそうなボロ小屋の中で、マイアは震えていた。

「……今日も寒いわね」

 季節は冬。
 小屋には隙間風が吹き込み、肌を刺すような寒さがマイアの身を襲っていた。

 寒いからといって、着込むための衣服は与えてもらえない。
 彼女は仮にも伯爵家令嬢だというのに。
 纏っているのは使い古したドレスの残骸だった。

「最近、つらいことばかりね……昔からそうなんだけど」

 マイアがここまで冷遇されている理由は、父が後妻を娶ったからだ。
 正妻との間に生まれたマイアも最初は優遇されていた。
 しかし母が急死し、父が後妻を娶ると……両親は後妻の娘のコルディアばかりを優遇するようになった。

 最初はまだマシな方だった。
 妹に優先的に物が与えられたり、好きな食べ物が与えられたり……姉だからと我慢していた。

 だが差別はさらにエスカレートしていく。
 使用人紛いの雑用や掃除などの奉仕をさせられるようになり……両親や妹はマイアを見下していった。

 母が死んだ彼女に味方などいない。
 されるがままに不遇な環境で育ってきたのだ。

 今ではこのように離れに押し込まれ、碌な食事も与えられず。
 しまいには妹の品格を上げるために悪い噂まで社交界に流されているようだ。そもそも社交界に出させてもらえないのだから、マイアが知ったことではないが。
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