嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~

2 公爵様のお屋敷にて

「こちらがマイア様の部屋になります」

 部屋──それはマイアにとって、実家のボロ小屋を想起させる言葉だった。
 しかし今案内された部屋は、小屋の何倍も広く豪華だ。

 部屋のど真ん中に置かれたキングサイズのベッド。
 ふかふかの真っ赤な絨毯。
 絢爛豪華なシャンデリア、クローゼット。

「……え、これ私の部屋ですか!?」
「そうですが……不満でしたか?」
「い、い、いえとんでもありません! 私には充分すぎるお部屋です!」

 あまりの広さに引け目さえ感じてしまう。
 これでもエリオット公爵家の中では中程度の部屋。
 しかし、マイアからすれば王族の部屋に思えてしまう。

 今まで暮らしていた小屋と比較すれば、あまりに格が違いすぎる。
 マイア視点では全てが天国に見えていた。

「え、えっと……セーレ様でしたっけ?」
「セーレで構いません。敬語も必要ありませんので。
 公爵様の妻として、相応の品格で振る舞ってください」
「はい、わかりました……あ、じゃなくて。わかったわ」

 ぎこちない様子で返答するマイア。
 彼女の様子を見て、セーレはため息を吐く。

 悪い噂ばかりのマイア嬢。
 正直、彼女がジョシュアに嫁ぐことはやめてほしかった。

 セーレが公爵家に忠誠を誓っているからこそ、悪評ばかりの令嬢に近づいてほしくなかったのだ。今は大人しそうにしているが、そのうち本性を現すに違いない。
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