嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
「こ、これは……!?」

 みるみるうちにアランの傷口は塞がっていく。
 彼は刮目して痛みが引いていく様子を体感していた。

 数秒後には完全に傷口は塞がり、むしろ全身の調子がよくなった気がする。

「マイア様、今のは?」
「おまじないよ。お母様から教わったの。辛いことがあった時とか、けがした時とか……このおまじないをかけると、元気になれるの。調子はどう?」
「は、はい! 素晴らしく快調になりました。ありがとうございます……!」

 感謝を述べるとともに、アランは深く考え込んでいた。
 このマイアの力は尋常ならざるものだ。
 本人は気づいていないようだが、知れ渡ればかなり大きな問題になる可能性がある。

(ジョシュア様に報告しておくべきか)

 もしもハベリア家がマイアの能力を知っていたのならば、ハベリア家は相当な間抜けだ。
 この驚異的な治癒能力を前にして、マイアを手放すなどあり得ない。

 おそらく知らなかったのだろうが……

「マイア様、ありがとうございます。
 それと、おまじないに関しては他言なさらない方がよろしいかと」
「そういえばお母様から、信用できない人には見せないようにと言われてたわ。
 でもアランさんは信用できると思うの」
「光栄です。本当にありがとうございました。ごゆっくりお休みくださいませ」
「ええ、おやすみなさい」

 アランは深々と礼をしてマイアを見送る。
 すぐに皿を片付け、ジョシュアの執務室へと向かった。
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