嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
「え、何を……?」
「ドレスはどんなものがお好みですか?」
「ドレスは……ええと。安いのでいいわ」

 マイアの返答を聞いたセーレは思わず呆れてしまう。
 本当にこの人は伯爵令嬢なのか……と。

「マイア様? 公爵夫人としての自覚をですね」
「ああっ、ごめんなさいごめんなさい! じゃあできるだけ高いドレスで!」
「いえ、値段の問題ではないのですが……こちらの赤いドレスはいかがでしょう?」

 セーレが提示した真っ赤なドレス。
 情熱的な色合いに、華美な装飾。スリットが大きめに入っている。

「あ、あの……ちょっと露出が多くないかしら?」
「ふふ、やはり予想通りの返答です。ではこちらの白いドレスはどうですか?」

 今度は純白のレースつきドレス。
 こちらは露出も控えめで、あまり目立ちそうにない。

「これがいいです!」
「承知しました。それでは髪を梳きますね」

 セーレは鏡台の前に座るマイアの髪に触れる。
 昨日の風呂のおかげで、ずいぶんと艶が出た。
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