嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
「ではこれにします」
「承知しました。こちら、夜会用のドレスですね。他のドレスもいかがでしょう?」
「夜会用……」

 困惑して固まるマイアに、セーレはひそひそと耳打ちする。

「夜会用のみならず、普段着、茶会用、公務用などなど……色々あるんです。
 せっかくですし、たくさん買っていきましょう」

 セーレの提案に、マイアは戦慄する。
 こんなドレスを何着も買っていたら、間違いなく自分の実家は破綻する。
 やっぱり公爵家は規模が違う。

 セーレは店員にマイアを押し出して尋ねた。

「こちらの方に似合いそうなドレス、一通り揃えてもらえますか?
 支払いはエリオット公爵家で」
「おお、ジョシュア様の……!
 どうりでお美しいと思いました。お似合いのドレスを店中から用意いたします。少々お待ちくださいませ」

 店員はうやうやしく一礼し、ドレスを用意しに行った。
 なんだか、かなり話が大きくなっているというか。
 マイアの想像を遥かに超えた待遇を受けている。

「こ、この後ジュエリーも買いに行くのよね……?
 目が回りそうだわ……」

 だがしかし、表面上はジョシュアの婚約者として立派に振る舞えるよう。
 身なりくらいは完璧に整えねばならない。

 ジョシュアは新たなドレスに身を包んだマイアを見て、喜んでくれるだろうか。

(ジョシュア様ならきっと……)

 いや、間違いなく。
 綺麗だと褒めてくれるのだろう。
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