嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 コルディアの言葉を聞いて、デナリスは心中で呆れかえる。彼女は金が無尽蔵に湧くとでも思っているのだろうか。

 ろくに勉強しないからこうなるのだ。
 コルディアを甘やかした父にも責任はある。

「それにね、贈り物をすると殿方はみんな喜んでくださるのよ! 私が褒められるほど、ハベリア家の評判も上がるでしょう?
 お姉様のせいでハベリア家のイメージが悪くなっているんだから、私に感謝してほしいものね!」

 コルディアはこう言っているが、彼女に対する社交界の評判はよろしくない。
 いつも遊び呆けていて、やかましく、そして大した学もないとの評価だ。

 彼女は単に金ヅルにされているだけ。
 しかし面と向かってそんなことを言える父ではなかった。

 そこで思いついたのが、姉のマイアを下げる作戦だ。
 コルディアのような女でも、あの悪評高いマイアよりはマシと思い込ませればいい。
 結果として出来上がったのが、このわがまま娘だった。

「とにかく、次の夜会までに新しいドレスを買うお金をちょうだい。素敵な殿方とめぐり合うには、素敵な衣装が必要なの」
「わかった……」

 用件だけを告げてコルディアは去っていく。
 上品なのは外見だけ。
 中身は上品さの欠片もない。

「で、どうします? ジョシュア公爵に催促の手紙を出しますか?」
「そうだな……」

 エドニアはソファに沈んで項垂れる。
 このままではマズいことになってしまう。
 とりあえず金が必要なのだ。

「手紙ではあらぬ誤解を招くやもしれん。
 デナリスよ、直接公爵家に行って催促してきてくれんか。偶然近くを通りかかったとか理由をつけて、決して失礼がないようにな」
「承知しました。マイア様のことですから、公爵様にも相手されずに支度金も忘れられているのでしょう。それとなく伝えておきます」
「頼んだぞ」
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