嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 エイミーの話は止まらなかった。
 第一印象は気難しく、高貴な人なのだと思ったが……話をしてみると意外に気が合う。

「エリオット公の派閥は、ディゴ卿やブラッド公も傘下に入っていますわ。交流を広げるのであれば、彼らから仲良くなるといいと思うわ」
「なるほど……勉強になります!」

 マイアはうんうんと頷き、エイミーの話に耳を傾ける。
 なにせ第二王子の婚約者で、公爵令嬢だという。
 言葉のひとつひとつに説得力がある。

 話だけではなく、お茶もおいしい。
 マイアは食べたこともないような高級菓子を堪能しつつ、お茶を飲んでいた。

「それにしても……ふふっ。マイアさんはとてもおいしそうにお茶を飲みますのね」
「……ハッ! これは失礼しました! お見苦しかったでしょうか」
「いえ、まったくそんなことありませんわ。むしろ見ていて気持ちがよいのです。それに、お話ししていても楽しいし」

 ほっと安堵するマイア。
 こんな調子で今度の夜会は大丈夫だろうか。

「ところで、マイアさんはジョシュア様とどこでお知り合いに?」
「えっと、縁談が来たんです。どうやらジョシュア様は仕事の邪魔をしない婚約者を探していたみたいで。それで社交界に興味がなさそうな私に結婚を申し出たと」
「なるほど。でも、マイアさんは噂のような悪女には見えませんね?」
「あはは……」

 苦笑いするしかない。
 妹の名誉を守るためとはいえ、下げられていたマイアはたまったものではない。しかし、この和やかな雰囲気に家庭内のドロドロとした話を持ち出すのも野暮だ。
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