嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 ハベリア家に帰宅したデナリスは、伯爵のエドニアに報告した。
 支度金を夜会の後に送ると、ジョシュアが語っていたことを。

「おお、そうか! よくやったぞデナリス!」
「お褒めに与り恐縮です」

 ジョシュアの言葉に踊らされているとも知らず、エドニアは浮足立つ。
 これで当面の資金不足は解決された。
 今後も公爵家の後ろ盾があれば、何かと便利だろう。

「ジョシュア公爵は、マイアについて何と?」
「さんざんな言い様でしたよ。どんくさいだの、無礼だの……婚約者に向ける言葉とは思えませんね。さすがは噂の冷酷公爵と言ったところでしょうか。かなりの女嫌いなのでしょうね」
「ふ、ふむ……まあいいだろう」

 エドニアも若干腑に落ちない点はあったが、これ以上の言及はやめておく。
 今はとにかく金の問題を優先だ。

「夜会といえば一週間後だったか?」
「そうですね。王侯貴族のみが参加する夜会ですから、我々には関係ありませんが」

 そのとき、執務室の扉が勢いよく開いた。
 姿を現したのはコルディア。

「お父様! その夜会、私も行くわ!」

 唐突な宣言に、エドニアとデナリスは固まった。
 盗み聞きをされていたこともそうだが、高位の貴族が集まる夜会に伯爵令嬢ごときが参加できるわけないだろうと。
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