嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
「コルディア……さすがにそれは無理だ」
「どうしてよ? お姉様だって参加するのでしょう?
 それに、私には公爵家のお友達もいるわ! 上手く夜会に参加できれば、王族の方々とも縁を結べるかもしれないでしょう?」

 いくら友人に公爵家の者がいたとしても、血縁者などでなければ参加することは難しい。その夜会は上流貴族が交流するための場所であり、コルディアは場違いなのだ。

「いいか、コルディア。今回ばかりはどうしようもない。これ以上、ハベリア家の家格を下げるわけにはいかんのだ」
「家格を下げているのはお姉様よ! 私は色々な貴族と交流を広げて、素敵な殿方からも好かれているのだから!」

 コルディアは好かれているのではなく、あしらわれているのだ。
 面と向かって「あなたが嫌いだ」などと言う貴族はいないだろう。
 それを自覚できていないから、未だに婚約者も見つからないし、マイアの評判を犠牲にしなければならなかった。

「とにかく、私は行くわ! お姉様の血縁者で、ジョシュア公爵とも関わりがあるもの。門兵ごときが夜会の入場を拒めるわけないでしょう?」

 そう告げて、コルディアは足早に去って行った。
 エドニアが頭を抱えたのも束の間。
 入れ替わるように妻のシャニアがやってくる。
< 60 / 87 >

この作品をシェア

pagetop