後宮毒見師伝~正妃はお断りします~
任明願
馬星星の反応に、彼が後宮にいていい人間で、悪い人間ではなさそうなことが分かった。
「いつも後宮にいらっしゃるのですか?」
「ううん、いつもじゃないけど、彼は第二皇子の専属のお付きだから」
「へぇ、あ、でも」
夏晴亮は気付いた、彼と第一皇子の名字が同じことに。
「うん。彼は皇子たちの遠縁。血は繋がってるけど、遠いから皇位継承権は無いみたい」
「なるほど」
だから、その縁で第二皇子に付いているということか。いろいろ納得は出来たが、彼に花束をもらう理由だけ今の説明では見当たらなかった。馬星星がにやにやする。
「いやぁね、そんなの亮亮に好意があるからでしょ」
「私に? 会ったこともないのに?」
それこそ理解出来ない。色恋沙汰に巻き込まれたことなどないので疎い自覚はあるが、初対面の相手を口説くなどあり得る話なのか。
「名前を知っていたんなら、向こうは初めてじゃないんでしょ。遠目で見て気になって調べたとか」
「うう、どうしよう」
夏晴亮は困ってしまった。
人から好意を持たれるのは悪いことではない。嬉しいことだと思う。しかし、こちらが何の感情も無ければ相手が望む結末はやってこない。悲しませてしまう。
「でも、間違いかも。他に事情があるとか」
「事情ねぇ。まあ、何も言われなかったのなら、それをもらって終わりでいいんじゃない? また会って口説かれたら、その時に考えればいいわよ」
「そうですね」
そうじゃないといいと思う。新しく用意してもらった過敏に花束を生ける。
「お揃いね~」
「もしかして、こっちのお花もあの人だったりするんでしょうか」
「そうかも。じゃあ、亮亮が宮女として採用されたばかりの頃からじゃない」
夏晴亮と馬星星が顔を見合わせる。任明願とは今日まで会ったことがないのに、最初から知られていたとは。どこで見かけたのだろう。
「任深持様に任明願か。男を手玉に取る悪女になったらだめよ。貴方は可愛いままでいてね」
「なんで任深持様が出てくるのですか?」
夏晴亮が首を傾げる。馬星星が感慨深く頷いた。
「亮亮はこうでなくっちゃ。さ、仕事行きましょ」
「はい」
部屋で寝ていた雨が花束を嗅ぐ。
「阿雨も行こうね」
『くぅん』
一声だけ鳴いて、雨は夏晴亮とともに部屋を出た。
「いつも後宮にいらっしゃるのですか?」
「ううん、いつもじゃないけど、彼は第二皇子の専属のお付きだから」
「へぇ、あ、でも」
夏晴亮は気付いた、彼と第一皇子の名字が同じことに。
「うん。彼は皇子たちの遠縁。血は繋がってるけど、遠いから皇位継承権は無いみたい」
「なるほど」
だから、その縁で第二皇子に付いているということか。いろいろ納得は出来たが、彼に花束をもらう理由だけ今の説明では見当たらなかった。馬星星がにやにやする。
「いやぁね、そんなの亮亮に好意があるからでしょ」
「私に? 会ったこともないのに?」
それこそ理解出来ない。色恋沙汰に巻き込まれたことなどないので疎い自覚はあるが、初対面の相手を口説くなどあり得る話なのか。
「名前を知っていたんなら、向こうは初めてじゃないんでしょ。遠目で見て気になって調べたとか」
「うう、どうしよう」
夏晴亮は困ってしまった。
人から好意を持たれるのは悪いことではない。嬉しいことだと思う。しかし、こちらが何の感情も無ければ相手が望む結末はやってこない。悲しませてしまう。
「でも、間違いかも。他に事情があるとか」
「事情ねぇ。まあ、何も言われなかったのなら、それをもらって終わりでいいんじゃない? また会って口説かれたら、その時に考えればいいわよ」
「そうですね」
そうじゃないといいと思う。新しく用意してもらった過敏に花束を生ける。
「お揃いね~」
「もしかして、こっちのお花もあの人だったりするんでしょうか」
「そうかも。じゃあ、亮亮が宮女として採用されたばかりの頃からじゃない」
夏晴亮と馬星星が顔を見合わせる。任明願とは今日まで会ったことがないのに、最初から知られていたとは。どこで見かけたのだろう。
「任深持様に任明願か。男を手玉に取る悪女になったらだめよ。貴方は可愛いままでいてね」
「なんで任深持様が出てくるのですか?」
夏晴亮が首を傾げる。馬星星が感慨深く頷いた。
「亮亮はこうでなくっちゃ。さ、仕事行きましょ」
「はい」
部屋で寝ていた雨が花束を嗅ぐ。
「阿雨も行こうね」
『くぅん』
一声だけ鳴いて、雨は夏晴亮とともに部屋を出た。