後宮毒見師伝~正妃はお断りします~
第一皇子の愛情表現
──いつも高圧的な印象だったけど、どこに暗殺者が隠れているか分からないんだから当然と言えば当然よね。
「これを」
側室となり、任深持の贈り物攻撃が復活した。ほぼ毎日小物を持ってきては夏晴亮に渡している。
「有難う御座います。でも、お気を遣われないでください。私はもう十分幸せですから」
「そうか」
仄かに落ち込んだ背中を申し訳なく思うものの、このままでは髪飾りだけで季節を超える量になってしまう。任深持が夏晴亮の問いかける。
「何なら受け取ってもらえるだろうか。私は貴方にこの気持ちを形にして贈りたい」
夏晴亮を側室に迎え、気持ちを押し殺さなくても問題無くなった途端任深持は箍が外れたらしく、こうして毎日毎日足繁く通い、口説いている。しかし、側室になってから数日、夏晴亮は彼から手さえ握られていない。
「そうですね。あまり高価でなく、身に着ける物ですと私の身が一つなので身に付けられず申し訳ないので……ああ、お菓子とか食べ物がいいです!」
「いいわね。それなら、毎日のお菓子を任深持様に選んで頂いたらどう?」
「馬先輩頭良い!」
女子たちのきゃっきゃした会話に置いてけぼりをくらったが、たしかにそれならば夏晴亮も気負わず受け取れると納得した。
「分かった、そうしよう」
とりあえず再び訪れた贈り物問題も解決したところで、扉が叩かれた。
「馬宰相でしょうか」
一人でやってきたので、任深持を迎えに来たのかもしれない。訪問者を確認すると、予想とは違う者だった。
「阿亮! 遊びましょ~~~~って、お邪魔でしたか」
正妃だった。側室の部屋に第一皇子と正妃と側室が揃っている。事情を知らぬ人間が目撃したら、どんな修羅場が繰り広げられているかと思うだろう。実際は真逆の平和な日常だ。
「いえ、お邪魔だなんてとんでもないです」
「いや、お邪魔だ。私は夏晴亮と話をしている」
「え~~、私も阿亮とお話したいです」
契約結婚だと聞かされていたが、正妃の態度を見てそれが本当なのだと馬星星が実感する。実に面白い光景だ。
「王美文様、こちら私に付いてくれている馬星星です」
「あら、はじめまして。どうぞよろしくね」
「お初にお目にかかります。以後お見知りおきを」
「ちなみに馬宰相の従兄妹さんです」
「えッッッ」
王美文の瞳が極限にまで見開かれた。完全に彼女の標的となった印だ。
「これを」
側室となり、任深持の贈り物攻撃が復活した。ほぼ毎日小物を持ってきては夏晴亮に渡している。
「有難う御座います。でも、お気を遣われないでください。私はもう十分幸せですから」
「そうか」
仄かに落ち込んだ背中を申し訳なく思うものの、このままでは髪飾りだけで季節を超える量になってしまう。任深持が夏晴亮の問いかける。
「何なら受け取ってもらえるだろうか。私は貴方にこの気持ちを形にして贈りたい」
夏晴亮を側室に迎え、気持ちを押し殺さなくても問題無くなった途端任深持は箍が外れたらしく、こうして毎日毎日足繁く通い、口説いている。しかし、側室になってから数日、夏晴亮は彼から手さえ握られていない。
「そうですね。あまり高価でなく、身に着ける物ですと私の身が一つなので身に付けられず申し訳ないので……ああ、お菓子とか食べ物がいいです!」
「いいわね。それなら、毎日のお菓子を任深持様に選んで頂いたらどう?」
「馬先輩頭良い!」
女子たちのきゃっきゃした会話に置いてけぼりをくらったが、たしかにそれならば夏晴亮も気負わず受け取れると納得した。
「分かった、そうしよう」
とりあえず再び訪れた贈り物問題も解決したところで、扉が叩かれた。
「馬宰相でしょうか」
一人でやってきたので、任深持を迎えに来たのかもしれない。訪問者を確認すると、予想とは違う者だった。
「阿亮! 遊びましょ~~~~って、お邪魔でしたか」
正妃だった。側室の部屋に第一皇子と正妃と側室が揃っている。事情を知らぬ人間が目撃したら、どんな修羅場が繰り広げられているかと思うだろう。実際は真逆の平和な日常だ。
「いえ、お邪魔だなんてとんでもないです」
「いや、お邪魔だ。私は夏晴亮と話をしている」
「え~~、私も阿亮とお話したいです」
契約結婚だと聞かされていたが、正妃の態度を見てそれが本当なのだと馬星星が実感する。実に面白い光景だ。
「王美文様、こちら私に付いてくれている馬星星です」
「あら、はじめまして。どうぞよろしくね」
「お初にお目にかかります。以後お見知りおきを」
「ちなみに馬宰相の従兄妹さんです」
「えッッッ」
王美文の瞳が極限にまで見開かれた。完全に彼女の標的となった印だ。