後宮毒見師伝~正妃はお断りします~
呪いの手紙
「旧字が使われているところを見ると、少なくとも二百年は前ですね」
「才国は建国して二百五十年程だ。もしかしたら、建国時のものかもしれないな」
文字が薄れて読めない箇所もある。前後の文脈から単語を予想して読む様が、夏晴亮には遠い世界に思えた。
「超国の文字は見当たらないか」
どうやら手紙で合っているようだが、超国のことを書いているわけではないらしい。
肝心の宛名が滲んで読めないのがもどかしい。ただ、内容が丁寧な言い回しなので、目上の人物に宛てたものなのは分かる。
「目上宛の手紙にしては、内容が穏やかではないですね」
「ああ。始終喧嘩腰だ」
読み取れた文章には、相手を否定する言葉ばかりが並べられていた。
「どうですか?」
「現代文に書き直してみよう」
分かる部分だけではあるが、任深持が読み取れた文章を分かりやすく書いてみせた。
『貴方のことはもう信じられません。私がどんな想いか分かりますか。今後、貴方を許すことはありません。あの世の淵で後悔してください』
それを目にした夏晴亮が顔を青くさせる。自分は見つけてはならないものを見つけてしまったのではないだろうか。呪いの言葉にも思える文章がとても恐ろしかった。
「見た人もあの世に連れて行かれそうです……」
「不幸を呼びそうね……何故、受け取った人はこんな手紙を取っておいたのかしら」
馬星星も両手で腕を擦る。他に手掛かりはないものか、任深持が手紙を裏返して観察した。
「馬牙風、お前ならこれを何と読む?」
紙を透かして、どうにか読めそうな一文字を馬宰相に問いかける。馬宰相が薄目で見つめた後、ぽつりと答えた。
「任……でしょうか」
「そうか。私もそう思った」
もう一度、一番上から読んでみる。もしかしたら、これは歴代皇帝の誰かへ宛てたものかもしれない。
「となると、差出人は皇帝へ意見の出来る人物。少なくとも、手紙が皇帝に渡せるような、宮廷内にいた者と考えていい」
「でも、実際に渡されたかは分かりません。ここに隠したのかも」
夏晴亮が任深持に意見を言う。任深持が右手を顎に当て考える。
「なるほど。そういうことも考えられる。とりあえず、過去の皇帝に恨みを持つ人物がいたのは間違いないだろう」
内部事情までは歴史書に書かれていないので、これは大きな一歩だ。
「才国は建国して二百五十年程だ。もしかしたら、建国時のものかもしれないな」
文字が薄れて読めない箇所もある。前後の文脈から単語を予想して読む様が、夏晴亮には遠い世界に思えた。
「超国の文字は見当たらないか」
どうやら手紙で合っているようだが、超国のことを書いているわけではないらしい。
肝心の宛名が滲んで読めないのがもどかしい。ただ、内容が丁寧な言い回しなので、目上の人物に宛てたものなのは分かる。
「目上宛の手紙にしては、内容が穏やかではないですね」
「ああ。始終喧嘩腰だ」
読み取れた文章には、相手を否定する言葉ばかりが並べられていた。
「どうですか?」
「現代文に書き直してみよう」
分かる部分だけではあるが、任深持が読み取れた文章を分かりやすく書いてみせた。
『貴方のことはもう信じられません。私がどんな想いか分かりますか。今後、貴方を許すことはありません。あの世の淵で後悔してください』
それを目にした夏晴亮が顔を青くさせる。自分は見つけてはならないものを見つけてしまったのではないだろうか。呪いの言葉にも思える文章がとても恐ろしかった。
「見た人もあの世に連れて行かれそうです……」
「不幸を呼びそうね……何故、受け取った人はこんな手紙を取っておいたのかしら」
馬星星も両手で腕を擦る。他に手掛かりはないものか、任深持が手紙を裏返して観察した。
「馬牙風、お前ならこれを何と読む?」
紙を透かして、どうにか読めそうな一文字を馬宰相に問いかける。馬宰相が薄目で見つめた後、ぽつりと答えた。
「任……でしょうか」
「そうか。私もそう思った」
もう一度、一番上から読んでみる。もしかしたら、これは歴代皇帝の誰かへ宛てたものかもしれない。
「となると、差出人は皇帝へ意見の出来る人物。少なくとも、手紙が皇帝に渡せるような、宮廷内にいた者と考えていい」
「でも、実際に渡されたかは分かりません。ここに隠したのかも」
夏晴亮が任深持に意見を言う。任深持が右手を顎に当て考える。
「なるほど。そういうことも考えられる。とりあえず、過去の皇帝に恨みを持つ人物がいたのは間違いないだろう」
内部事情までは歴史書に書かれていないので、これは大きな一歩だ。