極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
プロローグ どこかでお会いしたことありました?
「おはようございます」
定時一時間前。まだ誰も出社していないはずのオフィスで声をかけられた。
驚いて振り向くと、すらりと背の高い男性が立っていて。
彼は凛々しい表情をふわりと緩め、柔らかく微笑んだ。
「昨日はバタついていて、挨拶もできず失礼しました。祇堂です。よろしく」
昨日付けで広報部に配属になった彼――祇堂翔琉さんが律儀に手を差し出してくる。
彼はこのマーガレット製薬株式会社の社長令息。つまり次期社長だ。
イギリスの名門大学を卒業した超エリートで、今は様々な部署を転々としては功績を上げ、いずれ担う大役に向けて修業中だという。
経営者一族の名は伊達ではなく、腕も確かなのだそう。
加えて三十一歳とまだ若く、モデル並みのスタイルに顔まで整っていると評判だ。
噂のご尊顔を近くで眺めて、なるほどと納得する。
顔立ちは柔和なのに締まりがあって知性的。目もとは甘い印象なのに、眉はキリッと上がっている。
俳優なら主役級に抜擢されるビジュアルだろう。
髪は今どきながらも綺麗に整えられていて清潔感ばっちり。
光沢のあるダークネイビーのスーツは品よく誠実な印象だ。