極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚～余命０年の君を、生涯愛し抜く～

「それでは、まずは契約書の方から――」

タブレット端末を操作して電子文書を開こうとすると。

「星奈。大丈夫？」

突然名前を呼びかけられ、ドキリと心臓が跳ね上がった。

仕事中に名前を呼ばれるなど、普段はない。

周囲に誰もいないせいもあるけれど、よほど私が疲れて見えたのだろうか。

「……なんのことでしょう」

「顔色が悪い。今日、ずっと無理してるだろ？」

彼にはお見通しで困ってしまう。「申し訳ありません」と謝罪して、力なく愛想笑いを浮かべる。

「今日はもう帰って大丈夫だ。週末はゆっくり休んで」

「お言葉に甘えます」

「いいんだ、そのためのチームだから」

今日の業務はこれで終わり、そう思ったら気が抜けて体がいっそう重たくなってきた。

頭がぼんやりして視界にもやがかかる。自分のデスクまで戻ろうと、ドアに向かって歩き始めたとき。

ぐらりと体が揺れて、平衡感覚を失った。

「星奈！」

鬼気迫った声が響く。視界がぐるりと回って勝手に瞼が閉じ、再び目を開いたときには翔琉さんの顔が目の前にあった。

「星奈！　聞こえているか、星奈！」