極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
第七章 貪欲な愛情に追い詰められ、逃げ道が見つかりません
目が覚めると薄暗い天井が目に入ってきた。
カーテンの閉じられた窓、床頭台、点滴、心電図モニターと無機質な電子音。消灯後のようで、ベッド脇の黄色いライトだけが淡く灯っている。
この景色、久しぶりだ。またここに戻ってきてしまった。
「ずいぶん無理をしたみたいだね。久しぶりに酷い数値だ」
ベッド脇から響いてきた低く落ち着いた声に、ゆっくりと首をそちらに向けた。
真っ黒なスーツの上下にロマンスグレー。かつて死神と間違えた彼がそこにいた。
「伏見教授。お久しぶりです」
出会ってから二十年近く経つけれど、見た目はほとんど変わらない。年齢不詳でどことなくミステリアスな立ち姿は、いっそう死神にそっくりになってきた。
「通院以来だね。こんなふうに再会するとは思わなかったが」
教授は腕を組んで、曖昧な笑みを浮かべている。
「ここはどこですか? 私が眠ってから、何日が経ちました?」
「南里病院だよ。まだ日は変わっていない。君が倒れてから五時間といったところかな」
ということは二十三時過ぎだろうか。どうやら会社から一番近い救急病院に搬送されたらしい。