極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚～余命０年の君を、生涯愛し抜く～

「君の人生だ。どう生きようと君の自由――と言いたいところだけれど」

かつて『好きなことをしてみなさい』と背中を押してくれた教授だったが、今回ばかりは言葉を濁した。

「君の行動は、命をすり減らしていると言っても過言じゃない。悲しむ人がいるなら、身の丈に合った生活をするのも、ひとつの選択じゃないかな」

そう言って床頭台にちらりと目を向ける。そこにはメモの切れ端が一枚置いてあって【明日の朝、また来ます　母】と達筆な文字で書かれていた。

どうやら私が倒れたと連絡を受け、かけつけてくれたらしい。面会時間が過ぎたので一度家に戻ったのだろう。

「……そうですね。私になにかあったら母が悲しみます」

「お母さんだけではないだろう？」

その言葉に私は顔をあげる。教授は珍しく愁いを帯びた表情で目を逸らした。

「君を助けてほしいと電話してきた、あの子も」

「あの子……？」

誰のことを言っているのか一瞬わからなかった。だが、教授に連絡を取ってほしいと頼んだ相手はひとりしかいない。

「まさか翔琉さん――祇堂さんですか……？」