極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
彼の胸に顔を押しつけながら、弱った声で言う。

「血圧が上がって、伏見教授に怒られてしまうかもしれません」

彼がははっと笑う。

「これくらいは大目に見てもらおう。ハグにはリラックス効果もあるっていうし」

そう言って、私を強く胸に押し込み抱き竦めた。

それは熟年夫婦の話では? 付き合い始めの私たちでは、リラックスよりも興奮が勝ってしまうだろう。

とはいえ、跳ねのける気にもなれなくて、ほろ苦い快楽に身を委ねた。



目を覚ますと見覚えのない天井。でもオシャレなシーリングライトが取り付けられていて、病院ではないとすぐにわかり安堵した。

ベッドに入った記憶がない。私、またどこかで寝落ちしてしまったの?

よくよく思い出すと、リビングのソファで彼に抱かれたまま記憶が途切れていた。

好きな人の腕の中で眠りに落ちるなんて、贅沢な寝方をしたものだ。

彼が目を覚ましたらごめんなさいと――いや、ありがとうと言わなければ。

サイドテーブルの時計は六時を示している。カーテンの隙間から差し込む太陽が、ぼんやりと自室を照らし出す。

彼が客間のひとつを私の部屋にしてくれた。

上品な花柄のカーテンに、白い木材を使用した棚、クローゼット、そして化粧台。すべて私のために調達してくれたそうだ。

「一生分の幸せが押し寄せてきたみたい……」

はあ、とうっとりした息をついて、腕を額に置く。

どうかこの幸せが夢ではなく、永遠に続いていきますように、そう願って再び瞼を閉じた。


< 143 / 267 >

この作品をシェア

pagetop