極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
彼が帰ってきたのは二十三時過ぎ。待つのをあきらめて寝ようと考えていたところだった。
玄関のドアの開く音が聞こえて、思わずリビングを飛び出す。
「星奈、ごめん。会食のあと、社に戻っていろいろ確認しなきゃならなくて――」
私の足音を聞きつけて言い訳を始めた彼だったけれど、私の表情を見るなり言葉を止めた。
「――星奈。大丈夫?」
「ええ。ちゃんと安静にして待っていました」
「お利口だな、星奈は。でも――」
言葉を切ると、私の背中に腕を回し、きゅっと抱きしめる。
「そんな顔をしていたら、もう離れられなくなる」
やっぱり彼のいない一日は長かった。でも彼の顔を見た途端、寂しさなんて吹き飛んだ。
大好き、幸せ、そんな思いが涙となって溢れ出てきてしまう。
「ごめんなさい。なんだか嬉しくなっちゃって」
彼のスーツに涙のシミを作っては大変だ。体を離し、指先で目の下を拭う。
「翔琉さんと一緒に暮らしてよかった」
一日の最後に彼の顔が見られてよかった。
ぱちぱちと瞬きして滲んだ視界をならすと、困惑した表情で立ち尽くす彼が見えた。