極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
私は握手に応え「美守星奈です。よろしくお願いします」と会釈した。

「ずいぶん早くに出社しているんだね」

彼はあたりを見回して言う。定時より一時間も前となると、さすがに私たち以外誰もいない。

「祇堂さんこそ」

そのままお返しすると、彼は「まったくだ」と苦笑した。

「今のうちに資料を読み込んでおこうと思って。日中は忙しくなるだろうから」

確か彼は部長補佐の役職についたはず。私たち一般社員を監督する立場だ。

着任して間もないからといって『わからない』じゃ済まされない。

「業務的な内容でしたら私でも答えられると思いますので、なんなりとお尋ねください」

「ありがとう。逆にノウハウ的なところは遠慮なく聞いてくれ。アドバイスできるはずだ。それから――」

彼は困ったように笑って肩を竦めた。

「あまりかしこまらないでもらえると助かる。あくまで俺は一社員だから」

緊張が表に出てしまっていただろうか。次期社長と聞いて、無意識のうちに身構えていたのかもしれない。

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