極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
いつもよりつい早足になってしまう。ただでさえ体力がないから気をつけなきゃならないっていうのに、気持ちが急いて抑えきれない。

若干息を切らしながら、ビルの立ち並ぶ大通りを歩き続けること二十分弱、マーガレット製薬本社に到着した。最寄り駅から徒歩三分のところにある、地上二十階の高層ビルだ。

社内は案の定、騒がしかった。

定時一時間前、いつもは人がいないオフィスも、今日はすでに多くの社員が出社しフル稼働している。

とくに広報部は大忙し。体制変更について内外へ説明しなければならない。

デスクにつくと、すかさず課長がやってきて「美守さん、おはよう。これ」と段ボールを差し出してきた。

「おはようございます。課長、この空箱は……」

「荷物の移動に使って。社長室は十九階だ」

なんの話かさっぱり理解できずきょとんとしていると、課長は眉をひそめた。

「辞令、確認していないのか? 今日付けで美守さんは社長室に異動だよ?」

「はい……?」

ふうっと気が遠くなる。

そういえば桃野さんが給湯室で『あんまり調子に乗ってると、部長にお願いして飛ばしてやるわよ』と言っていたっけ。

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