極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
彼が社長令息と知り媚びを売る輩も多いのだろう。修業中の彼としては、特別扱いされるのはあまり好ましくないはずだ。

私は「はい」と頷き、いったん彼の素性を忘れることにする。

「美守さんの評判は聞いているよ。とても熱心に仕事に取り組んでくれてるって。昇進についても前向きに検討しているそうだ」

「私が昇進、ですか?」

褒められて光栄ではあるけれど、突拍子もない話だ。

体制に関しては年功序列の傾向が強い会社だ。入社してまだ二年の私が、出世するとはとても思えないのだけれど……?

不思議な顔をしていると、彼はフォローするかのように「ほら」と切り出した。

「今もこうして、早くに出社して働いているしね」

「あ、ええと、今朝は新サービスの概要が上がってきたので、関連情報のクリッピングを。誰に頼まれたわけではないので、仕事というよりは勉強ですが」

「残業は申請していないみたいだけど、これも時間外労働だよね?」

「私が好きでやっていることですので、残業とは言えませんよ」

気が抜けたのか、彼はすとんと肩を落とす。凛々しい顔立ちに甘みが加わり、胸がきゅっと疼く。

「情報が集まったらぜひ見せて。俺も興味がある」

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