極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
武久さんは祇堂さんと直前までやり取りしていたが、祇堂さんが前社長と並び会見の場に立つと、私とともに舞台袖に引っ込んだ。

「祇堂社長から納得のいく説明は受けましたか?」

武久さんは会見が進んでいくのを見守りながら、私に耳打ちする。

「はい」

結局、こんな自分が社長室に招いてもらえたのは、幸運以外のなにものでもない。納得できたかと問われれば、正直、疑問や不安の方が多いが――。

「今でも信じられない思いでいっぱいですが、チャンスをいただけたことに感謝して、精一杯頑張りたいと思います」

正直に答えると、武久さんの眼鏡の奥の目が心なしか柔らかくなった。

「入社して三年の美守さんにすべてを背負わせる気はありませんから、まずは気負わずに。ひとまずあなたには社長に張り付いていてもらいます。慣れてきたら、経営の方を。特に患者中心医療や企業市民活動などを重点的に担当してもらいたいと考えています」

私はハッとして息を呑む。

武久さんが言っているのは社会貢献の分野、つまり、希少疾病における取り組みも含まれる。きっと私の意を酌んで担当させてくれたのだ。

「光栄です。ぜひやらせてください」

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