極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
第一章 秘密を抱えた女と、とある男の思惑
「ねえ、美守さん。あなた、いい加減にしてくれない?」
広報部のオフィスがある十二階、給湯室。
私は部内で一番の美女と謳われている桃野さんに壁ドンされ、人生最大のピンチを迎えていた。
「ひとりで目立とうとするなんて、いい度胸してるじゃない」
どうやら私が独自で情報収集しているのが気に障った様子。
決して目立とうとしたわけではないのだけれど、聞き入れてもらえなくて困っている。
「ですから、私は勉強のために――」
「じゃあ、どうしてその情報を祇堂さんに渡してるのかしら?」
「それは……見せてほしいと言われたので」
「ちゃっかりアピッてるじゃない!」
昨日、ライバル企業のプレリリースが配信された。特定の分野において国内外の三社と共同開発するというもので、これについて影響が出そうな医薬品を一覧化した。
もはや広報の仕事というよりは経営に近く、自分でも出すぎた真似をしたなあとは思っている。
でも祇堂さんは私がまとめた資料を喜んで受け取ってくれた。
「よりにもよって祇堂さんに取り入るなんて! ちょっと気に入られてるからっていい気になってんじゃないわよ」