極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
自身の手に私の手を重ねて、きゅっと握る。冷たいものを食べて冷えきっていた体に、彼の熱がじんわりと伝わってくる。

驚いて、思わず重なった手をぼうっと見つめてしまった。

「手を繋ぐのも、初めてだった?」

「……はい」

他人と、ましてや男性と手を繋ぐのは初めて。

「またひとつ、新しい経験ができたね」

私が立ち上がるのを手助けして、一歩先をゆっくりと歩き出した。車まで五十メートルくらいだろうか。わずかな時間が妙に長く感じられる。

「不思議ですね」

「ん?」

「ご迷惑をおかけして申し訳ないはずなのですが」

わざわざ手を引いてもらって、恐縮するのが普通だと思う。けれど――。

「なんだか、嬉しくて」

彼が頼もしいからだろうか。他人からこんなに優しくしてもらったのが初めてだから?

……初めて?

ふと胸につかえるなにかがあって、眉をひそめた。自分よりも温かくて大きな手に引かれたことが、過去にもあった気がして。

思い出せそうで思い出せない不思議な記憶。ただひとつ確かなことは、彼と手を繋いでいるととても落ち着く。

そのとき、するりと左手が解かれた。

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