極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~
冷静になった目で「答える前に、ひとつ聞いてくれ」と言い添える。

「君を社長室に招いたのは俺の個人的な感情からじゃない。仕事ぶりや業務への姿勢を見て判断した。武久も今は君を評価しているよ。だから、仕事とは分けて考えてほしい」

もちろんわかっている。彼は公私混同するような人じゃない。

今だって、私が拒みづらくならないように逃げ道を用意してくれているのだ。

彼の熱っぽかった眼差しが途端に冷めてしまい、なんだか悲しくなった。

「迷惑なら聞かなかったことにしてくれてかまわない。今まで通り、社長と秘書として――」

「やめてください……」

首を大きく横に振る。

これ以上逃げ道を作らないで欲しい。私だって、彼に惹かれているのだから。

一緒に過ごした時間の分だけ、彼への想いがふわふわと膨らんでいった。

最初は雲のように曖昧で形がなく、憧れにも似た感情で、鈍感な私はピンとこなかったけれど。

好きだと言われて、言葉では言い表せないほど嬉しい自分に気がついて、今ようやくこの想いがはっきりと形になった。

「聞かなかったことにはしません。私だって、好きだから……」

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