絶交ゲーム
冷静に考えれば自分を襲ってきた相手が真横にいる状態で、こんな風に普通に立っている女性はいないと思う。
必死で逃げて助けを呼ぶんじゃないだろうか。

もう二度と、傷つけられないために。


「そんなことを言われても……」


豊は眉を寄せて私と浩二を交互に見つめている。


「雛ちゃんのことを襲ったって、本当か?」

「襲った? 俺が?」


豊はまだ滝を繰り返して自分のことを指差した。
その目はこぼれ落ちてしまいそうなほど見開かれている。


「そうだ」

「そんなことするわけないだろ! 雛ちゃんは浩二の彼女なんだし、俺は恋人とか、そういうのまだ興味ないって知ってるだろ?」


まくしたてるように言うのが逆に嘘っぽくなってしまっている。
豊の視線が私へ向けられたので、私は知らん顔してうつむいた。


「それならカバンを見せてみろよ」

「カバン?」

「早く!」


浩二に怒鳴られて豊は渋々学生カバンを差し出した。
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