オメガがエリートになり、アルファが地に堕ちた世界
「もしも、仮に漣さんが私の番だったとしても、
私の相手をしてもらうのは申し訳な……さ、漣さん?」

私が言葉を最後まで言い終わる前に、漣さんは私を抱きしめた。昼間の公園は、人が少ないとはいえ、何人かはいるわけで。


「は、恥ずかしいです。子供が見てますから」

「関係ありません。九条さんは俺だけを見ていてください」


「……はい」

優しい声色に思わず返事をしてしまった。まだどこか恥ずかしいはずなのに。なのに、漣さんから目を逸らせない。


それは漣さんが私にとっての『運命』だから?


「罪悪感なんて感じないで。俺が九条さんを求めている。そこにちゃんと愛はあるから。だから、今から貴女のことを抱かせてください」

「なっ……!」

今、なんて言ったの?


『抱かせてください』

私にはたしかに聞こえた。


上から目線でも、無理やりでもなく、私に同意をとるような聞き方。動揺していても、私の答えは決まっていた。だって、こんなにも私を求めるような目で見つめてくるんだもの。

こんな姿を見せられたら、誰だって先のことを考えないくらい虜になる。
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