オメガがエリートになり、アルファが地に堕ちた世界
「もちろん、ムリにとはいいません。九条さんが嫌なら1人で処理しても構いません。薬でおさえるのもいいと思います。俺はその間、どこか別のところに外泊してますので。く、九条さん?」

「し、したいです。私も漣さんと……」

私は漣さんの服をギュッと掴んだ。それは「してもいいよ」の合図。口にしなくても伝わるだろうか。


「九条さん、ありがとうございます。それでは戻りましょうか。俺たちの家に」

「は、はい」


そんな心配はいらなかったようだ。

漣さんは私の考えてることが手にとるようにわかる。

それは番だから?


お互いに好きだと言葉にしなくても気持ちがわかる?なんて、ロマンチック。これこそ、私が理想として描いていた未来。アルファとオメガが逆転しても、こうして王子様と出会えるなら、こんな出会いも悪くないとさえ思えてくる。

シンデレラだってそう。最初は継母たちにいじめられ、絶望のどん底だった。けれど、最後はハッピーエンド。まるで今の私みたい。この先もずっと漣さんと一緒にいたい。


この人なら私を幸せに、シンデレラにしてくれる。そう、この日までが幸せの絶頂期だった。まさか、この先、あんなことになろうとは今の私には想像もつかなかった。
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