オメガがエリートになり、アルファが地に堕ちた世界
ーーーピコン。


昼間。私のスマホに1通のメッセージが届いた。

漣さんは朝からお仕事で、私は一通りの家事を済ませてソファーで一息ついていた時だった。


珍しいな。私に今更誰が連絡なんてしてくるんだろう。アルファとオメガが逆転して以来、私を気にかける人なんて誰一人としていなかった。
漣さんだけは違った、けど。


未来(みく)からだ……なんだか懐かしい」


五十嵐(いがらし)未来(みく)。私と小中学が同じで就職するまで連絡を取っていた親友兼幼なじみ。

市役所に勤めてからは忙しくて何気に連絡取ってなかったんだよね。未来はベータで普通の人。


私がアルファだってことは知ってるから、もちろん世界が変わったと同時に私が最底辺に落ちたことも知ってるはず。なのに、どうして?


『美怜、久しぶり。元気にしてる?
暇なら、今日会わない?』

『いいよ。私も今日お休みなんだ』


と、返事を送った。お休みって、仕事をクビになってからはずっと休みなんだけどね。

漣さんが私のことを養ってくれるから私は何もしていない。っていうか、今は普通の仕事ができないし。


『出かけるときは必ず連絡してください』

以前、漣さんから言われた。けれど、一人で外出することはなくて今まで忘れていたのだけど。

連絡、か。今の時間は漣さんも仕事だし、邪魔したら悪いよね。それに昼間だし、友達に会うだけだから夕方には帰って来れるし。連絡はいらないかな。


私は私服に着替えて家を出た。久しぶりに外に出た気がする。普段は漣さんが一緒か、漣さんのお手伝いさんが後ろからボディーガードみたいについてきてたから。

そこまで心配しなくても、昼間から私を襲うケモノなんていないと思うんだけど。
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