オメガがエリートになり、アルファが地に堕ちた世界
「そっか。今はハイスペックイケメン彼氏と同棲ね~。結婚でもするの?」

「け、結婚!?」


それは考えてなかった。そりゃあ、ちょっと前まではそんなことを夢見てたけど、今はそんなことを考える余裕さえなくて。


漣さんの年齢なら、今仮に結婚したとしても、むしろ遅いくらい。私と結婚まで考えてくれてるのかな?そもそも付き合ってるかわからないし。

あ、れ?抱かせてくださいとは言われたけど、付き合ってくれとは言われてない気がする。どうだったっけ。私の記憶が正しければ言われてないや。


「年上イケメンはなんて名前なの~?」

「漣剛士さんっていうの。あ、でも漣さんは去年までオメガで……」


「じゃあ、今はハイスペックなわけだ。でも、美怜がアルファだからって差別なんかしないよ」

「未来、ありがと」


「っていうかさ、アルファとかオメガ関係なしに世界が平和だといいのにね。ベータだっているんだから、いちいち差別とかひどくない?

差別するってことは、それほど自分に余裕がないんだよ。自分が幸せだったら、人の悪口言う暇なんてないもん!」

「そう、だよね」


未来は昔からそうだった。オメガがイジメを受けている時だって助けていた。誰もが見て見ぬふりをしている中で。

けれど、未来みたいな考えの人ばかりじゃない。
自分が幸せでも、相手の不幸を願う人間だって世の中にはいる。私だってそうだ。未来みたいに出来た人間じゃない。


世界は綺麗なもので溢れている。そんなのは幻想だ。本当は汚れていて、人間という生き物がこの世で最も醜い。だからこそ、理不尽な仕打ちをされてきたオメガの願いによって、世界が逆転したんじゃないか。

でも、神様が本当にいるんだとしても、祈りだけでこうも簡単に世界が変わるのはおかしくはないだろうか。疑問に思ったところで、どうしようもないのだけど、時々思ってしまうのよね。
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