オメガがエリートになり、アルファが地に堕ちた世界
「漣さん、書類忘れてる……」

リビングのテーブルに大きな封筒に入った書類。大事な書類だと思った私は、封筒に書いてある番号に電話をかけた。

漣さんのサブスマホで繋がるとは思えない。昨日、繋がらないって言ってたし。でも、ダメ元でかけてみよう。


プルプルプル。


『はい』

「も、もしもし。漣剛士さんという方に代わっていただけないでしょうか」


普通に電話は使える。だとしたら、また私は漣さんに嘘をつかれていたことになる。なんで、自分以外にしかかけられないなんてウソを?逃げられなくするため?


「〇‪✕‬病院で働いていると聞いたのですが……」

『確認をとったのですが、〇‪✕‬病院の医師の中に漣剛士という人物はいません』

「そう、ですか。ありがとうございました」


私は電話を切った。

未来の言う通りだった。漣さんは病院で働いてなんかいない。

じゃあ、この書類はなんのために?カモフラージュだとしたら納得がいく。私は今まで〇‪✕‬病院で働いていると聞いていたから。ううん、そういう風に思い込まされていた。

怖いけれど、今日こそは聞くんだ。漣さんの正体について。私をなんの目的でここに置くのかを。返答次第では私は漣さんを嫌いになってしまうかもしれない。
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