オメガがエリートになり、アルファが地に堕ちた世界
「俺、貴女に初めて出会った時からこうしようって決めていたんです。今の世界こそが、俺たちが出会う本当の世界だったんですよ」


本当の世界?漣さんが世界を変えておいて、よくもそんな言葉が出てくるわね。


「初めて会った日?私はあの日、死ぬつもりだったのに」

「やっぱり……覚えてないんですね。でも、今はどうだっていいんです。俺の嘘はすべてバレてしまったけど、九条さんがいるなら何も問題はない」


私は世界が変わる以前に漣さんと接触していた?
いつ?どこで?なにも思い出せない。


「ねぇ、最後に聞かせて」

「なんですか?」


「どうしてカウンセラーの先生なんかやってるってウソをついたの?子供たちの話をしている貴方はとても演技してるようには見えなかった」

「あれは俺のもう1つの夢だったから。でも、オメガの俺はそんな仕事をさせてもらえない」


「オメガはアルファよりも上になったのに?」

「世界が変わったとはいっても劇的に変化するわけじゃない。九条さんは一部のオメガを知らないから。逆転した世界だって、その人自身が変わらなければ、何の意味もないんですよ。人は失敗を恐れず、行動してこそ一人前ですから」


「でも、アルファ研究所でアルファを奴隷にしてこき使ってるんでしょ」

失敗を恐れず行動する。それはとても良いことのように聞こえるけど、漣さんの行動の仕方は間違ってる。私のためにどれだけの人が犠牲になったか。
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