オメガがエリートになり、アルファが地に堕ちた世界
「死なせるわけないだろ?最後に聞かせてなんていうから可愛いオネダリかと思ったら、俺を油断させるための作戦だったとはな。そんなので俺が油断するとか馬鹿すぎ」

「馬鹿じゃ、ない。私は貴方から逃げるためなら自らの命だって捨てる覚悟よ!」


私の知ってる漣さんはもういない……。

嫌われたって怖くない。でも、外に出て一人でなにができる?世界が変わってしまったのに。

私だけじゃ生きていけない。だからこそ、漣さんは世界を変えたんだ。こうすれば、出会うだけじゃなく、私の逃げ場がなくなるから。


未来には迷惑をかけられない。大事な親友が漣さんに傷つけられるなんて、そんなの死んでも嫌。


「カウンセラーにはなれなかったけどさぁ~」

「……?」


「闇医者ならいくらでも知り合いがいるんだよね。アルファ研究所のボスはそういうの人と仲良くなれるんだよ」

「っ……!?」

私は注射を打たれた。即効性の毒かもしれないという不安はなかった。私を殺せるチャンスはいくらでもあったはずだから。

漣さんは私を手元に置いておきたいんだ。抵抗されずに生かしておくには、麻痺の類の注射?


「九条さんは俺とずっと一緒にいてくれるんだよね?それなら大人しくしておいたほうが身のためだよ。好きな人に暴力を振ったりはしないけど、次に抵抗したら俺、なにをするかわからないよ」

「漣、さ……」

意識が途切れていく。なにも考えられなくなっていく。


「ずっと一緒にいようね、美怜」

唇に漣さんのが触れた。前までは嬉しかっただろうな。好きな人にキスされたって。でも、今は違う。とても怖くて恐ろしい。心からそう思う。おかしいよね。漣さんは番なのに……。
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